上田城址公園の次に向かったのが、別所温泉の北向観音。善光寺参りだけだと片詣りになるから是非こちらも――と伝えられる北向観音ですが、参拝の順番があるのかは不明です。今回は神奈川から関越道を使って北上していくルートを選んだので、別所温泉の北向観音をお参りしたその翌日に善光寺という旅程になりました。
北向観音のサイトによれば「北向観音様は北向に建立され 千手観音様を御本尊として現世利益を願い、また善光寺様は南向きに建立され阿弥陀様を御本尊として未来往生を願」うとあります。観音信仰を考えれば納得できるものながら、北向観音と善光寺の両方を訪ねた感想としては、未来往生を願う筈の善光寺の方が垢抜けてて俗っぽい印象でした。もっともあちらは名の知れた観光地ですからそれもまあ当然なわけですが、個人的にはこじんまりとした温泉街のなかに佇むこの観音堂の方が断然好みです。
上田方面から別所温泉を目指してひたすら山を登ってくると、温泉街の入口にいくつか駐車場があり、そこに停めることができました。それから横に入った緩い上り坂を少し行くと、すぐ境内の入口に出ることができるのですが、ここはいったん駐車場を出てから温泉街の入口を目指した方がよいかもしれません。写真の通り、階段から下を見下ろすかたちで土産物屋が並び、その向こうに佇む観音堂を眺めることができます。
しかし年末が近いこともあってか、境内を入ってすぐのところには年賀状販売とおぼしき会議机が並べられ、背中にシャッターマンと大書きされたジャンパーを着こんだ老人が観光客へしきりに声を掛けているのは興醒めで、さりげなくやり過ごそうとしたところを見つかってしまい「シャッター、切りましょうか」と声をかけられてしまいました。「いえ、結構です」と軽く頭を下げてその脇をすり抜けようとしたものの、狙った獲物は逃さんとばかりに傍らへすーっと音もなく近づいてくるなり、カメラを構えた自分のファインダーを一緒に覗き込むようにしながら「いやいや、私だったらここはカメラを縦にして撮りますなあ」などと構図の写真指導を始めたかと思うと、挙げ句には「いいカメラを持ってますなあ」「いやあ、富裕層は違うっ!」とすぐそばでよく分からない褒め方をされる始末。どうにか数枚ほど観音堂の全景を納めるや慌てて立ち去った次第ですが、北向観音ではシャッターマンに気をつけるべし(^^;)。
右手には「不動堂」を掲げた護摩堂がありました。小さな小窓から覗いてもあまりに暗くて、建物の中がどんなふうになっているのかを確かめることは叶わず。
そのさらに奥には、行基菩薩が創建し慈覚大師が再建したと伝えられる温泉薬師瑠璃殿がありました。以前に「埼玉・吉見町の岩室観音と石仏群」でも紹介した岩室観音と同じ懸造で、このつくりの建物が信州には多いような気がしています。
このあと、車で近くの常楽寺にに向かう予定だったのですが、徒歩でも行けるとの標識を見つけて予定変更。まだ時間もあるので、のんびり歩きながら行くことに決めました。続く。