前回の続きです。飯舘村の綿津見神社を参拝したときにはもう四時近くになっていました。ここから車で土湯温泉へと向かうルートはいくつかあるのですが、国道114号線を使うルートでは花見山周辺を通過するため渋滞があるかも……という危惧から、今回選んだのは県道52号の狭い山道をひた走るルート。実際、google mapで経路検索をしてもこの道が最速ルートとして表示されるのですが、狭い道は苦手な自分としてはただひたすら対向車がないことを祈るばかり。幸い、二台の対向車をやり過ごすだけでどうにか魔の県道52号は通過できたのでヨシとしましょう。
この道を走るのははじめてだったのですが(いつもは福島駅方面から 国道399号を使う)、上田市から松本へと向かうときに使った県道12号よりは遙かにチャンとした道路でした(県道12号は金輪際使いたくないほどトラウマになっているのです ^^;)。
さて、前回土湯温泉を訪れたのはいつだったかとアルバムを返してみたら、昨年の5月でした。ほぼ一年ぶりということになります。さすがに一年も経てばほんの少しながらも変わってはいるもので、まず、ますやさんから松雲閣へと続く橋の手前にあったこけしのオブジェが新しくなってました。とはいえ、ますやさんの前にあった公衆浴場は相変わらずの絶賛工事中。またますやさんの横で元ホテルだったとおぼしき土地は綺麗に舗装され駐車場になっていましたが、ここは観光客用というわけではなく、私有地の様子。
さて、今回で土湯温泉に泊まるのは三回目で、毎回ホテルを変えています。土湯温泉にはホテルも少なく、全館制覇も不可能ではないのですが、三つのホテルに宿泊することで見えてきたものがあります。それは何かというと「土湯温泉に足りないもの」。
ふくしまには有名な温泉街が数多あります。東山温泉を初めとする会津の温泉街は県内のライバルともいえるのではないでしょうか。東山温泉を筆頭とする会津の温泉街と土湯温泉はどこか違うのか。泉質。もちろんそれもあります。しかし温泉宿に泊まる観光客が求めているものは温泉だけではありません。
そう、食事。会津の温泉と比較して土湯温泉に足りないと個人的に感じるのはこれなのです。昨年の後半から今年の前半はもっぱら信州の温泉宿を愉しんできた自分ですが、今回は、「会津、信州の温泉街」と土湯温泉の食事を比較しながら感じたところを簡単にまとめてみたいと思います。
温泉宿といえばやはり地のものを愉しみたいもので、会津と信州にはいくつもの名物料理があります。自分が宿泊したホテルで食べた料理を魚、肉、鶏に分けてみると以下の通り。
- 会津: 鯉の甘煮(魚)、会津牛、馬刺(肉)、会津地鶏(鶏)
- 信州: 鯉の甘煮、信州サーモン(魚)、馬刺(肉)、上田地鶏(鶏)
奇しくも会津と信州では鯉の甘煮と馬刺しが一致するという偶然。では土湯温泉で宿泊したホテルで食べることができた地のものはどうか。
- 土湯: なし(魚)、なし(肉)、川俣軍鶏(鶏)
肉は福島牛とかがあるかと思うのですが、残念ながら自分が泊まった宿ではいずれも食べることができませんでした。ただ、地元の名産品としてあることは確かなので、肉については措くとして、個人的に土湯温泉でもっとも足りないと感じているのが「魚」です。鯉を出しては会津の二番煎じと誹られるやもしれず、ここはやはり一刻も早く鰻の養殖を実用化させてもらいたいものですね。土湯温泉の地熱を使った鰻の養殖については以前のストーリーにも書きましたが、ネットで見ることができるいくつかの記事にも掲載されています。
関東・東海で食べ慣れた鰻料理をふくしまの人がどんな逸品に仕上げてくるのか――大変興味のあるところです。