先日の記事で、前沢曲家集落の近くに屏風岩という観光名所があると書きましたが、それがこれ。今あらためてそのときの写真を見返してみるにつけ、その景観は塔のへつりというよりは、秩父の長瀞に近いといった方がいいかもしれません。とはいえ、全国区の知名度を誇る長瀞のごとき殷賑は絶無で、土産物屋などは一軒もなく、ただガランとした駐車場に「屏風岩」と書かれた看板が立っているだけという質素なもの。大きさはこれまた長瀞に比較するとその半分にも満たないものながら、紅葉の季節になればなかなか綺麗なのカモ、――とさながら芭蕉の心境になって眼の前にない風景に思いを馳せたり……。
南会津から奥会津へと続く山間は、とにかく天気の急変が激しく、この日は、東北道を那須で下りて、そこから一般道をひたすら北上するコースを選んだのですが、那須のあたりでは曇りだった天気も前沢曲家集落についたときにはカンカン照りで、そこからさらに奥に向かうにしたがって山間には雲が厚くせり出し、屏風岩では大粒の雨にたたられました。
しかし車だから良いものの、果たしてこのあたりにバスは通っているのかどうか。さらに国道を奥に進めば檜枝岐村を抜けて尾瀬沼ですから、どちらかというとこのあたりは尾瀬に向かう人の通過点に過ぎなかったりして……。このあと芦ノ牧温泉に向かうため、またまた国道をひたすら北上していったのですが、その道のりの長いこと長いこと。新潟と栃木の通過点で観光地としてはチと寂しい趣のある南会津・奥会津ですが、道の駅に立ち寄れば普通に露地物の美味しい野菜が格安で売られていたりするし、道のあちこちに蕎麦畑がいっせいに花を咲かせている景色の美しさなど、ここを目的地とするのではなく、ちょっと遠回りしてみるか(実はちょっとどころではないのですが(苦笑))くらいの気持ちで訪ねてみると、思わぬメッケモンに巡り会える、――そんな場所だと感じた次第です。
ちなみに去年の秋、紅葉が始まったあたりに訪れた長瀞の写真はこんな感じ。もしかすると紅葉の季節ともなれば、屏風岩もまた違った景観を見せてくれるのかもしれません。とはいえ、この秋にもう一度訪ねてみたいか、と訊かれても、あの長い長い道のりを思い出すにつけ、積極的に「イエス!」と答えることができないのがちょっとアレではありますが(爆)。